2023年3月9日木曜日

2月15日(水) ASK第11回特別講演会

ASKアクティブシニア交流会の催事について、これから努めて報告記事をHPに掲載していく事に致しました。

第1号の報告記事です。

2月15日 あすみん 文責 西田和也

データが示す福岡市の不都合な真実


木下敏之・福岡大学経済学部教授

 全国的にも「成長率が高く、住みやすい」と言われる〝福岡市〟。そのような概念を「一人当たりの所得」「人口増」等のデータに基づいて、木下氏は「問題あり」と指摘する。彼は「地元産の徹底」、人口減という状況に対してこれからの行政、経済界の大きな仕事として「結婚支援」「福岡市版育児保険の創設』や、今後の重要なマーケットとして「団塊女子」を具体的な実例で挙げた。

 木下氏は農林水産官僚を経て、若くして地元・佐賀市の市長になり、その後福岡市長選に打って出たが、現市長の高島宗一郎氏に破れ、2012年4月からは福岡大学の教授に。そして社会的な活動では2,3に1回の割合で「木下塾」を開催している。これから推測すれば、次期市長選への意欲はありありである。

 特別講演会で木下氏がまずデータで示すのは『福岡市民一人当たりの所得』。「30年間横ばい。実質的には減少」。2018年度の「福岡市の所得区分別分布」では、年収300万円未満が40%もいる。

 業種別GDPでは、卸売・小売業の売上げは20年間減少し続けて、伸びている不動産業もマンション賃貸業が中心で、都市開発は増えていない。持ち家率も30%.。

 これまでの都市開発や、現在進行中の「天神ビックバン」でも大半は利益は東京に持っていかれ、それが株主にされている。これに対して「1%でも地元産に切り替える」と、5年間で約1千億円が地元に落ちる」と、木下氏は〝With Kyusyu〟〝Buy Kyusyu〟を強調する。

 現在、日本の経済はデフレで長らく成長は伸びていない。33ヵ国の財政支出伸び率とGDP成長率を1997ー2015年の伸び率を年換算でみても日本は最低にある。これに対して木下氏は日本政府と日本人の誤解として「国債は負債ではない」という観点に立って、「デフレの時にはインフレの時の政策を」と、財政出動等すべきと指摘する。

 この考えは、京都大学教授の藤井聡氏や三橋貴明氏ら『経営科学出版』を舞台にしたメンバーが提唱している論理で、財務省等批判を繰り返す。では果たして「国債は負債であるのか、そうでないのか?」それを考えるのに、経済学の歴史を考える必要がある。

 経済学は「見えざる手」と自由に任せるといったアダム・スミスに端を発した資本主義の社会を発展させた。その後、マルクスは『賃労働と資本』から『資本論』で、抜本的に資本主義の矛盾を解析した。そして、ケインズが『雇用、利子および貨幣の一般理論』で、「不安定な市場経済を安定させ、適切な雇用と所得を達成するためには政府の積極的なマクロ経済政策が必要」と、近代経済学を提唱し、米国フランクリン・ルーズベルトが大恐慌時代に適用し、資本主義の危機を救った。

 世の中はその後、英国サッチャー、米国レーガン、日本にあっては小泉、竹中の新資本主義が台頭し、その弊害が現在指摘されている。こうした論点からよりも、日本経済の問題は、安倍政権のアベノミクス及び日銀の黒田東彦10年の財政緩和、ゼロ金利を検討したら、停滞した日本経済の本筋にせまれるのではないだろ 。

 最後に木下氏は「人口問題」に触れた。「若者が増えている」というのは「幻想」と、2019年から「0-14歳が減少に転じ、2016年から福岡市の出生率の減少が始まり、2022年には更に悪化とデータは示している。平成25年から29年の5年間の出生率は1.20と全九州274市町村中で最下位という。

 少子化の原因の90%は独身化、晩婚化だが、そこに対策を打とうとしていない。男性の70%が「出会いがない」と指摘している。さらに、お見合いが減り、最近は会社での出会いが急減している。これからの行政と経済界の大事な仕事には「結婚支援」がある。それと同時にそこにシニア世代が活躍する場がある。

 また、1年間もらえる「育児休業給付金」も対象が正社員で、出産する母親の70%には給付金がもらえない。結婚した夫婦が子供を生むためには「福岡市版育児保険」の創設も不可欠である。

 2030年には人口の半分が50歳以上となる。こうした中で、旦那があの世にいった後、妻は遺産を相続して金持ちとなる「団塊女子」が出現する。今後の重要なマーケットで、ここでは若者より、シニアの経験がモノをいう時代となる。


自由に放任するのでなく